更新日:2026年3月|対象バージョン:Fender Studio Pro 8以降
Fender Studio Pro(旧PreSonus Studio One)のショーページ(Show Page)は、ライブパフォーマンスのためにDAWに直接統合されたステージマネージャーです。このガイドでは、セクション間の同期システム(Sync Mode)の全オプションを解説し、テンポがバラバラな楽曲群でもメトロノームをオーディオ化してショーページで使うプロの手法を紹介します。
目次
ショーページとは何か
ショーページの構造:セットリスト・プレイヤー・パッチ
同期システム完全解説:Sync Modeの全オプション
テンポがバラバラな場合の問題点
メトロノームをオーディオ化してショーページで使う方法
Drum Metronome機能でさらに一歩先へ
実践ヒント:ライブ本番で失敗しないための設定まとめ
よくある質問
1. ショーページとは何か
ショーページはStudio One 5から導入されたライブパフォーマンス専用の作業空間です。GigPerformerやMainStageに相当する機能がDAWに直接統合されており、1台のコンピューターでバッキングトラック再生・バーチャルインストゥルメント演奏・エフェクト切り替えを完結させることができます。
Fender Studio Pro 8では以下の新機能が追加されています。
ビデオ再生サポート:映像演出を含むライブでオーディオと映像を一括管理
Fender Mustang / Rumble Nativeプラグイン統合:ギター・ベースのアンプシミュレーターをショーページ内で使用可能
Fender Studioアプリ連携:スマートフォンで録音したセッションをワンタップでPCへ転送
Studio One Pro Remoteアプリ対応:タブレットからパフォーマンスビューを操作可能
2. ショーページの構造
セットリスト(Setlist)
セットリストはライブセットの構成リストです。各「セットリストアイテム」が1曲に相当し、テンポ・拍子・キー・曲終了後の動作を個別に設定できます。
曲終了後の動作は3択です。
Stop at End:曲が終わると停止。拍手を受けながら手動で次の曲へ移行できる
Continue:次の曲へ自動で続く。メドレーやノンストップセットに最適
Loop:現在のセクションをループし続ける。サビを引き延ばす用途などに
プレイヤー(Players)
プレイヤーはショーページにおける「トラック」の概念で、3種類あります。
Backing Track Player:事前に録音されたオーディオファイルの再生用
Virtual Instrument Player:DAW内蔵・外部VSTをリアルタイムで演奏
Real Instrument Player:ギター・ベース・マイクなどの外部音源をエフェクト処理して出力
パッチ(Patch)
パッチは各プレイヤーに割り当てる「スナップショット」です。曲が変わると、その曲専用のエフェクト設定・プリセット・ミックスバランスが自動的にロードされます。ギタリストなら曲ごとに異なるアンプ設定、キーボーディストなら異なるシンセプリセットを自動切替できます。
3. Sync Modeの全オプション
Sync Modeは、ライブ演奏中にアレンジャートラックの別セクションへジャンプする際のタイミングを制御するシステムです。セクションをダブルクリックすると「ペンディングジャンプマーカー(三角形アイコン)」が表示され、設定に従ったタイミングでセクション遷移が実行されます。
モード
ジャンプのタイミング
使いどころ
Off
ダブルクリックした瞬間に即時
SE・環境音など拍に縛られないコンテンツ
1 Bar
次の小節頭
素早い切替が必要な楽曲。最大1小節待つだけ
2 Bars
次の2小節区切り
2小節フレーズで構成される楽曲
4 Bars
次の4小節区切り
最もよく使われる設定。ポップス・ロック全般に対応
End
現在のセクションが完全に終わってから
セクション尺がまちまちな楽曲やジャズ・インプロビゼーション
Tips
パフォーマンスビュー中にダブルクリックするとSync Modeを無視して即時ジャンプできます。緊急時の対応に使えます。また Escキー を押すと、ショーを停止させずに編集画面に戻れるため、本番中の設定変更も可能です。
4. テンポがバラバラな場合の問題点
ショーページでライブセットを組む際によく直面するのが「曲ごとにテンポが異なる」問題です。
ショーページのセットリストアイテムにはテンポを個別設定できますが、バッキングトラック(オーディオファイル)自体にはテンポ情報は含まれていません。次のようなシナリオが問題になります。
曲Aは120BPM、曲Bは96BPM、曲Cは140BPMで制作
それぞれのソングページで書き出したバッキングトラックをショーページに読み込んだ
セットリストで各曲に正しいテンポを設定しても、バンドメンバーへのクリックはDAWのメトロノームが各曲の設定に従って鳴るだけで、「バッキングトラックと完全同期したクリックWAVファイル」が存在するわけではない
特にテンポチェンジがある楽曲では、DAIの内蔵メトロノームをそのまま使うだけでは不完全です。ここで有効なのが、メトロノームをオーディオファイルとして書き出してバッキングトラックに含める手法です。
5. メトロノームをオーディオ化する方法
Fender Studio Proには、メトロノームのクリック音を**オーディオトラックとして書き出す「Render(レンダー)機能」**が搭載されています。
ワークフロー概要
ソングページでテンポ確認
↓
Metronome Setupを開いてサウンド設定
↓
Renderでソング全体をWAV書き出し
↓
ショーページのBacking Track Playerに配置
↓
サブアウトでバンドモニターへルーティング
ステップ1:各曲のソングページでテンポを確認
ソングページを開き、テンポトラックを確認します。テンポチェンジがある楽曲の場合もRender機能はすべての変化に追従するため、事前に正確なテンポトラックを組んでおくことが重要です。
ステップ2:Metronome Setupを開いてサウンドをカスタマイズ
トランスポートバーのメトロノーム設定(レンチアイコン)をクリック
Accent(1拍目)・Beat(それ以外)・Offbeat(オフビート)のサウンドと音量をそれぞれ設定
バンドのモニター用としては、識別しやすいクラベやウッドブロックなどの音色がおすすめ
ステップ3:Render機能でWAVファイルを書き出す
Metronome Setupウィンドウ右上の「Render」ボタンをクリック
レンダー範囲のオプションから「Full Song Length(ソング全体)」を選択して実行
現在のテンポ・拍子設定に完全追従したWAVファイルが新規オーディオトラックとして自動生成される(テンポチェンジも反映済み)
生成されたオーディオクリップを右クリック →「Export Audio」で書き出し
ファイル名は SongA_120BPM_click.wav のように曲名とテンポを入れると管理しやすくなります。
テンポチェンジがある曲の場合
Renderはテンポトラックのすべてのテンポチェンジに追従します。途中でテンポが変わる楽曲でも、クリックトラックのWAVに正しく反映されます。バッキングトラックと一緒にショーページに配置すれば、完全同期した状態で使えます。
ステップ4:ショーページのBacking Track Playerに配置
ショーページを開き、クリックトラック用の新規Backing Track Playerを追加(「Click」など分かりやすい名前を付ける)
各セットリストアイテムのスロットに、対応するクリックWAVをドラッグ
曲Aのスロット → SongA_120BPM_click.wav
曲Bのスロット → SongB_96BPM_click.wav
以下同様
ステップ5:クリックトラックをバンドのモニターにルーティング
ショーページのミキサーでクリックPlayerのアウトプットを**サブアウト(Sub Out)**に設定
PA出力にはクリックを乗せず、インイヤーモニターやモニタースピーカーにだけ送ることができる
Song Setup → Outputsタブで特定アウトプットの「Metronome」ボタンをオンにする方法も併用可能
6. Drum Metronome機能
Fender Studio Pro 8で新たに追加されたDrum Metronomeは、単調なクリック音ではなく実際のドラムパターンをメトロノームとして使用する機能です。
75種類以上のグルーブパターンを収録(ロック・ジャズ・ラテン・ファンクなど)
パターンはMIDIとして編集可能
通常のメトロノームと同様にRenderでオーディオ化できる
ショーページへの活用方法
各曲のテンポに合わせたDrum MetronomeパターンをRenderしてショーページに組み込むと、バンドメンバーのモニターが「単調なクリック」から「グルーブ感のある仮ドラムトラック」になります。演奏のノリが向上し、特にバッキングトラックなしのアコースティックセットや、ドラマーがいないバンド編成で効果的です。
7. 実践ヒント
ファイル管理を統一する
ShowProject/
├ backing_tracks/
│ ├ 01_SongA_backing.wav
│ ├ 02_SongB_backing.wav
│ └ 03_SongC_backing.wav
└ click_tracks/
├ 01_SongA_120BPM_click.wav
├ 02_SongB_96BPM_click.wav
└ 03_SongC_140BPM_click.wav
Sync Modeはジャンルで使い分ける
状況
推奨Sync Mode
テンポ固定のポップス・ロック
4 Bars
ジャズ・インプロビゼーション
End
SE・環境音・テンポレスなコンテンツ
Off
EDM・ダンスミュージック(8小節フレーズ)
EndモードでSection長を8小節に設定
緊急時のショートカットを覚えておく
Muteボタン:全プレイヤーの出力を即座にミュート。ステージでのトラブル時に使用
All Notes Offボタン:MIDIノート詰まりで音が鳴りっぱなしになったときの緊急停止
Escキー:ショーを止めずに編集画面に戻れる。本番中の設定変更が可能
ダブルクリック(セクション):Sync Modeを無視して即時ジャンプ
タブレット操作を活用する
ステージ上で常にPCに触れないパフォーマーには、Studio One Pro Remoteアプリ(iOS/Android)が有効です。パフォーマンスビューをタブレットから完全操作でき、ステージ移動中でもセクション切替・パッチ変更が行えます。
8. よくある質問
Q. バッキングトラックのテンポを途中で変える方法は?
バッキングトラックはオーディオファイルのため、ショーページ上でテンポを変更することはできません。テンポチェンジが必要な場合は、ソングページのテンポトラックにテンポチェンジを書き込んだ状態でオーディオを書き出す必要があります。クリックトラックもその状態でRenderすれば自動的に反映されます。
Q. Drum MetronomeをショーページでそのままONにして使えますか?
Drum Metronomeはソングページ上の機能です。ショーページで使うには、ソングページでRenderしてオーディオ化したものをBacking Track Playerとして配置してください。
Q. セットリストアイテムごとにメトロノームのBPMは自動切換えされますか?
ショーページのセットリストインスペクターでアイテムごとにテンポを設定すると、DAW内蔵メトロノームはそのテンポで鳴ります。ただしバンドへのクリック配信をオーディオで行う場合は、この記事で解説したRenderによるオーディオ化が最も確実です。
Q. Studio One 7のショーファイルはFender Studio Pro 8で使えますか?
旧バージョンのファイルはFender Studio Pro 8で開けますが、8で保存したファイルは旧バージョンで開くことができません。アップグレード前に必ずバックアップを取っておくことをおすすめします。
本記事はFender Studio Pro 8(2026年3月時点)の情報を基に作成しています。

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